令和2年10月19日全校朝礼に代えて 「読書週間によせて」

公開日 2020年10月19日(Mon)

読書週間によせて               校長 林 匡

おはようございます。

10月16日からは,いよいよ3年生の民間企業就職試験も始まりました。たとえ厳しい状況でも負けないで,是非目標を実現されるよう,今までの取組の成果を挙げられることを願っております。また,進路先が既に決まった人も,それぞれの時間を更に生かしていくように,考え行動しましょう。

 この秋,新型コロナウイルス感染症対応を図りながらも,資格・検定試験や各部活動の地区大会,県大会が続いています。学校では文化祭という大きな行事もありますが,これも感染予防とともに,できうる方策を検討しながら,生徒会を中心に皆さんが取り組んでいることを,頼もしく思います。

何をするのか自ら考える習慣を持ち,よりよい方向を見いだし,行動に移しましょう。

 

 さて,今日から本校では,11月6日までを校内読書週間に設定していますね。読書週間について少し触れておきます。

 読書週間は,アジア太平洋戦争後間もない,1947年に「読書の力によって,平和な文化国家を作ろう」という決意のもと,出版社・取次会社・書店,公共図書館,新聞・放送のマスコミ機関が連携して第1回が開催されました。翌年の第2回から,期間が10月27日~11月9日の,文化の日を中心とした2週間に定められ,全国にこの運動が広がっていった歴史があります。

 

 「ラストページまで駆け抜けて」が今年の読書週間の標語です。また本校では,特別活動で「本のポップを作ろう」にも取り組むことになっています。文化祭で展示されますので,今から楽しみにしています。

 

 本を読みましょう。

 先人の切り拓いてきた,広い視野,深い洞察と豊かな感性とその表現にふれてください。閲覧や検索の履歴から,自分の関心のある,好きなもの,好ましいものばかりを提示されることに慣らされないように。短い単語の掛け合いだけではなく,文章の中から本質を見いだすように。

 

 自分の知らない世界に入っていくことも,この秋に,是非試みてください。気楽に読めるものばかりではなく,少し背伸びをしたものにもトライして,「何だろう」「どうなっているのかな」「なるほど」といった,疑問と思考を深める機会をもってください。

 

 私たちの脳は,生きていくために絶対に必要な器官ですね。これ無しでは,心臓の働きや呼吸をはじめ,生命活動を支える機能が停止してしまいますから。

 ただ,脳の働きはそれだけにとどまりません。記憶し,感動し,思考し,時に決心し,行動する。言葉を話し,抽象的なことを考える。経験を通して生きる意味を考える。これらも,脳あってのことです。

 

 脳内では,複雑で巨大な神経細胞のネットワークが張り巡らされています。

 この脳の働きをよくする方法には,適度な運動や睡眠,食事などがありますが,これらとともに,皆さんに特に勧めたいのが読書です。(なんだ,そこか,と思った人もいるでしょう。)

 10代後半の皆さんの時代こそ,特に神経細胞が発達して,秩序だった神経回路がつくられて,認知,運動,感情などの高度な情報処理を実現する,情報の伝達がより効率的になるのです。今だからこそ,です。

 

 映像や音声といった,瞬時に感覚として受け入れられるものとは違い,読書では文字から言葉を読み取り,自分の脳を使って解釈し,理解しなければなりません。分からないことがあれば,読み返し,辞書を引くこともあります。自分の生き方,その他,形のないもの,在り方なども考えることにもなるでしょう。

 こうした活動や,理解に至るまでの行動,思考,想像などが,脳内の神経細胞を発達させ,更に精密さを増す中で,知的な力量を高めます。

 

 ともあれ,まず皆さんには手に本をとって,昼休みや放課後,ちょっとした時間を利用して,読書の喜びを味わい,生きる世界を,より広く深く捉えてほしいと願います。